テーマ 112 管理職者として強い意志と迅速な行動が必要な時代
■PDCAをブラッシュアップし仕事のレベルを上げる
Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)
のサイクルに変わるものとして、
元アメリカ空軍パイロットのジョン・ボイド大佐が提唱した
OODAループ(ウーダループ)いうものがあります。
Observe(観察し)、Orient(方向を決め)、
Decide(決断し)、Act(実行する)
の頭文字をとってOODループと呼ばれております。
「Observe(観察)」
:市場や顧客といった外部環境をよく観察し、生データを収集する
「Orient(状況判断・方向決め)」
:収集した生データを基に、現状を把握・方向決めする
「Decide(決断)」
:具体的な方針やアクションプランを決める
「Act(実行)」
:決まったことを、迅速に実行する
OODAループは自分の置かれている状況を
瞬時に判断し実行しなければ命を
落とすことにもなりかねない緊迫した
戦場から生まれた機動性重視の方法論といわれております。
PDCAサイクルとOODAループを比較してみますと、
PDCAサイクルがまず現状分析を念入りに行い
万全の計画を立ててから行動しようとするなど、
行動までに時間がかかるように見える点や
自社の現状重視的な手法となっている
イメージ面が強いのに対し、
OODAループはObserve、つまり周囲や相手をまず観察して、
迅速に決断するといった、
機動性重視、環境重視の考え方の
イメージが強い面があります。
ここに、「VUCA(ブーカ)」
(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、
Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)
といわれる今の時代へ対応するための手法として、
環境を把握した上で迅速に行動するといった
OODAループが注目されている理由があります。
本来は、PDCAサイクルもOODAループと同じように
機動性重視、環境重視のものであるはずのものですが、
長年使用しているうちに、
PDCAの手順通り行ってさえいればよいという意識になり、
本来の計画や実行のあり方が誤解され
甘くなってきているという状況があるかと思います。
現在、社内で行っているPDCAの手法を
無理に変える必要はないかと思いますが、
OODAループの環境重視、迅速な行動重視の
考え方は重要と思います。
変化を起こしていくというのが、
今の厳しい時代への最善の対応策といえます。
環境に働きかけ環境をつくり、
新しい現実を生み出していくためには、
PDCAもブラッシュアップし、
仕事の行い方をレベルアップ
したものにする必要があります。
■自分で考え、仕事を創造し、新しい現実をつくる
一橋大学名誉教授、野中郁次郎氏と東洋大学名誉教授、山口一郎氏の
共著「直感の経営」(2019年3月)の中に下記のような記述があります。
----------
哲学者スティーヴン・トゥルーミン(1922〜2009年)は、
近年主流になってきている数学的な理論経済学が
金融資本主義を先導し、
現実と人間を軽視した結果、
理論偏重のアカデミズムの袋小路に
直面していると警鐘を鳴らしている。
歴史と伝統を重んじ、個別具体の文脈で「理に適った(reasonable)」
実践を講じた道理性が中心であった
第1期の「人間味のある時代」を経て、
第2期の「科学的合理主義の時代」が到来した。
そこでは「合理的(rational)」であることが
「理性的」であるとされ、数学的厳密性や行きすぎた
理論偏重の考え方が台頭し、個別具体の現実に基づく
理性が軽視された結果、現代の閉塞状況がつくり出されてしまった。
そのうえで、これからは
第3期「合理性」と「道理性」が共存する時代であり、
この閉塞状況を打破する唯一の手段は
道徳的ルネッサンス・ヒューマニズムの復活である。
----------
理論的、合理的というのは、決して悪いこととは思いませんが、
過剰な理論的、過剰な合理的が、
今の時代の閉塞状況を招いているという
認識になっているかと思います。
「VUCA(ブーカ)」
(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、
Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)
といわれる今の時代では、
過剰な理論主義、過剰な合理主義では、
乗り切ってはいけないという認識ともいえます。
実務的には、必要以上の現状分析や理論のための理論の
組み立てではなく、自社や周りの環境を常日頃から
的確に把握した上で、自分で考え、仕事を創造し、
新しい現実をつくっていくという認識を持つことが大切です。
管理職者として、しっかりとした意志、考えを持って、
目標を設定し、それを周囲に話し、説得し、納得してもらい、
迅速に行動していくという、
強い意志と迅速な行動が求められている時代と言えます。
|